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葬儀における火葬とは|流れや注意点など知っておきたい知識を解説
葬儀の締めくくりともいえる儀式が火葬です。お葬式においてなくてはならない存在ですが、「火葬とはどういったものか」「具体的にどういったことを行うのか」など、火葬の実態をご存じない方も多いかと思います。
そこで本記事では、葬儀における火葬の流れや注意点など、火葬に関する基本的な知識を解説します。記事の後半では、火葬に関するよくある質問にも回答していますので、ぜひ皆さんが喪主を務める際の参考にしてください。
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目次
そもそも火葬とは
火葬とは、亡くなった人物の遺体を焼却することで処理する葬法です。燃え残ったお骨は骨壺へ納め、お墓や納骨堂へ葬るのが一般的な流れとなっています。火葬は仏教に由来する儀式であり、仏教信仰者の多い日本において主流の葬法です。ちなみに、火葬することを”荼毘(だび)に付す”と言いますが、荼毘は遺体を燃やして弔うことを意味する仏教用語です。
かつての日本では、遺体を土に埋める土葬も活発に行われていました。しかし明治時代に、伝染病による死者の火葬を命じる法律が政府より発布されます。この法律をきっかけとして日本全国に火葬場の設置が進み、徐々に火葬が日本全国に広まるようになりました。また、遺体を埋められるだけの広い土地が必要な土葬に対し、火葬はコンパクトな骨壺を納めるため埋葬の場所を取りません。そのため、国土の狭い日本に適した葬法といえます。
ちなみに、日本で選ばれる葬法のほぼ100%が火葬ですが、これは世界的に見てもかなり高い割合です。例えば、キリスト教信者が多いアメリカでは、葬法として土葬も多く選ばれます。これに最も影響しているのが、人は死後に復活して天国へ行けるというキリスト教の死生観です。復活に必要な肉体を燃やすことはタブーであるため、遺体は土葬によって葬られます。一方で、近年では無宗教者の増加や、高額な土葬費用といった理由から、アメリカ国内でも火葬を選択する人が増えつつあります。
葬儀における火葬の流れ
火葬には、必要な手続きや決められた手順があります。
続いて、葬儀における火葬の流れについて解説します。
事前に必要な手続き
火葬を行うためには、火葬許可証が必要です。火葬許可証は、故人の死亡届を提出することで交付されます。届出先は、故人の本籍地・届出人の居住地・故人が亡くなった地のいずれかの市区町村役場です。亡くなってから7日以内に死亡届を提出することが義務付けられていますので、なるべく早めに届出を行い、火葬許可証を入手しましょう。
出棺・火葬場へ移動
葬儀・告別式の最後に棺を霊柩車へと運び入れた後、同行者も車に乗って火葬場へと移動します。先頭に喪主が乗車する霊柩車、続いて僧侶や遺族の乗車するハイヤー、最後に親族やそのほかの同行者が乗車するマイクロバスの順に列をなして移動します。
かつての日本には、葬儀の参列者たちが棺を担ぎ、葬列をなして火葬場や埋葬地へと移動する野辺(のべ)送りの風習がありました。霊柩車を先頭にして車両が列をなす姿は、この野辺送りの名残ともいわれます。
火葬場に到着したら
火葬場に到着後、持参した火葬許可証を担当者へ提出しましょう。許可証の確認が済んだら、霊柩車から棺が下ろされ、火葬炉の前まで運ばれます。多くの火葬場では炉前に祭壇が設けられていますので、葬儀場から持参した遺影や白木の位牌を設置します。
納めの式
棺の安置が完了したら、納めの式が行われます。お坊さんによる読経が行われる中で同行者は焼香を行い、場合によっては棺の窓を開けて故人との最期の時間を過ごします。焼香の順番は、喪主に続いて遺族、親族のように故人と血縁の深い順です。なお炉前での滞在時間を短縮するため、焼香の回数を制限される場合もありますので、火葬場スタッフの指示に従ってください。
全員の焼香が終わると、棺は炉内へと運び込まれ、火葬が始まります。通常、火葬を開始する点火ボタンは喪主が押しますが、精神的にボタンを押すことが難しい場合は、火葬場スタッフが代理で押すこともあります。
火葬
火葬にかかる時間は、故人の体格や火葬炉の性能によっても変わりますが、おおよそ1時間から2時間ほどです。火葬終了までの間、同行者は火葬場に併設された控室で待機します。この時、喪主はお茶やお菓子、軽い食事などを同行者へふるまい、故人の思い出を語り合いながら過ごしましょう。なお、控室が用意されていない火葬場では、ロビーにて待機することになります。また、中には火葬の待ち時間を利用して精進落としの会食を取る場合もあります。この場合、葬儀社へ精進落としの弁当を用意してもらうほか、火葬場近くの料理屋へ移動して会食することも可能です。
骨上げ
火葬終了後、燃え残った故人のお骨を骨壺へと納める骨上げを行います。お骨を拾い上げる順番は、故人との血縁が深い順です。竹の箸を使って、二人一組で一緒にお骨を拾い上げ、骨壺へと入れていきます。箸を使って遺骨を拾い上げる行為には、”この世からあの世へと橋(箸)渡しする”との意味が込められています。
なお地域によっては、一人が拾ったお骨を他の人物が箸で受け取る方法で骨上げを行うことも場合もありますので、気になる方は事前に火葬場スタッフに確認してください。またお骨は、足元から上半身のお骨の順に拾っていき、生きている時と同じ姿となるよう骨壺へ納めていきます。最後に、喪主が喉仏のお骨を納めて、骨上げは完了です。
火葬終了後
骨上げが終わると、火葬場スタッフが骨壺を白木の箱に納めて錦袋(きんたい)と呼ばれるカバーをかぶせてくれます。お骨は、喪主が両手で抱えるようにして持ってください。骨壺には火葬してすぐのお骨が納められており、箱が熱くなっている場合もあるため受け取る際は注意してください。また火葬後には、埋葬許可証を忘れず受け取りましょう。火葬許可証に火葬済証明印が押されたものが埋葬許可証です。この書類は骨壺を墓地や納骨堂へ納める際に必要となりますので、納骨の日まで保管します。その後、自宅や葬儀場へ戻って還骨法要を行いますが、近年では初七日法要を併せて行うケースも増えています。
火葬に関する注意点
続いて、葬儀の火葬において注意したいポイントを解説します。
火葬するのは亡くなってから24時間以降
日本では”墓地、埋葬等に関する法律”の第3条により、死後24時間以内の火葬は禁止されています。そのため、ご逝去後24時間は遺体を安置した後に火葬する必要があります。医学が発達した現代ではほとんど見られませんが、かつては死亡が確認された後に息を吹き返す可能性があったため、誤って火葬してしまわないよう本条文が設けられました。
なお、妊娠7カ月に満たない死産の場合はこの限りではありません。また、新型コロナウイルス感染によって亡くなった場合、もしくはその疑いがある場合は、例外として死亡後24時間以内の火葬が認められています。
通夜式や葬儀・告別式を行う一般的なお葬式では、自然と遺体を24時間以上安置することになるため問題ありません。しかし、通夜を行わない一日葬や、火葬のみを行う火葬式の場合は、葬儀までの間に遺体の安置時間を設けるといった配慮が必要です。
副葬品はルールに則ったものを
副葬品とは、故人と共に棺の中に納める品物のことです。故人が生前大切にしていた品々や故人の好物、生花を納めますが、基本的に可燃性のものしか入れられません。例えば、故人が使っていた眼鏡や杖などは燃え残ってしまうため、副葬品に適していません。また、プラスチック製品やビニール製品は燃焼時に有害物質が発生するため、棺に入れるのは避けましょう。
ペースメーカーなどの医療機器は、燃焼時に爆発して遺体や炉内を傷つける可能性があります。故人がペースメーカーを付けている場合は、事前に葬儀社や火葬場のスタッフに申し入れてください。副葬品の判断に迷う場合は、事前に葬儀社スタッフに確認しておくと間違いがありません。
地域によっては火葬を先に行うことも
全国的には、通夜や葬儀・告別式を済ませた後に火葬を行う後火葬が一般的ですが、地域によっては葬儀・告別式の前に火葬を済ませる前火葬が行われることもあります。現在でも東北地方や北海道、九州地方などの一部地域で見られる風習です。
先に火葬を行う理由として、土地柄が挙げられます。例えば、雪深い地域や山間部の地域では、訃報の連絡を受けた参列者が葬儀場へ向かうのに時間を要することが考えられます。また南の温暖な地域では、高い気温や湿度によって遺体の腐敗が早まることもあります。そのため、これらの地域では先に遺体を火葬してから葬儀を行う流れが主流になったようです。
なお、先に火葬してから行う葬儀は、骨葬とも呼ばれます。もし、火葬をどのタイミングで行うかわからない場合は、親族や葬儀社スタッフに確認するとよいでしょう。
火葬で心づけを渡す場合は
心づけとは葬儀でお世話になった方へのお礼のことで、一般的には現金をお渡しします。火葬では、霊柩車・マイクロバスの運転手や火葬場スタッフへ心づけを渡すことがあります。ただし、公営の火葬場の場合、スタッフは公務員となるため心づけの受け取りを禁じられています。無理に渡すと賄賂とみなされスタッフが罰せられる可能性もあるため、注意してください。
心づけは、白無地の封筒に包んでお渡しします。なお、かつては当たり前の風習だった心づけですが、近年では不要とすることも増えています。判断に迷う場合は、葬儀社スタッフに確認しておきましょう。
火葬場でのマナー
ほとんどの火葬場では、カメラやスマートフォンを使った撮影が禁止されています。これは、故人や遺族のプライバシーを守るためです。故人との最期の時間を記録に残したい気持ちがあるかもしれませんが、火葬場での撮影は控えてください。なお、中には葬儀時に記念写真を撮影してくれる葬儀社もありますので、こういったサービスを利用するのもおすすめです。
また、火葬終了までの時間は控室で過ごすことになりますが、大きな声で騒いだり笑い声をあげたりといった行為はマナー違反です。ほかの遺族にも配慮して、静かに落ち着いて待機するようにしましょう。
火葬に関してよくある質問
ここまで、火葬の基本的な流れや注意点をご紹介しました。
最後に、火葬に関してよくお問い合わせいただく質問に回答します。
燃え残ったお骨は全て骨壺に納めるのですか?
全てのお骨を骨壺に納めるかは、地域によって異なります。そもそもお骨の収骨方法は、部分収骨と全収骨の2通りがあります。東日本では、燃え残ったお骨を全て骨壺に納める全収骨が多く見られます。一方で、西日本では頭蓋骨や腕、足といった体の部位ごとのお骨を納める部分収骨が一般的です。
一説によると、収骨方法の地域差にはかつて存在していた全ての遺骨と灰を持ち帰る決まりが関係しているといわれています。この決まりが関東で広まったことにより、東日本と西日本で収骨方法に違いが生まれたようです。
また、東日本と西日本では収骨するお骨の量が異なるため、骨壺のサイズにも違いが見られます。東日本では7寸の骨壺が主流なのに対し、西日本では3寸から5寸と、容量が若干小さめの骨壺が一般的です。
火葬場には何を持っていけばよいの?
火葬場へ向かう際、絶対に忘れてはいけないのが火葬許可証です。火葬許可証は、遺体の火葬許可を公的に示す書類で、これがなければ火葬できません。そのほかには、遺影や白木の位牌、骨壺を持っていきます。火葬場スタッフへの心づけを持参する場合は、お金を白封筒などに入れて用意しておきます。また、待ち時間を控室で過ごす場合は、同行者へふるまうお茶やお菓子、軽食なども持参するとよいでしょう。
葬儀の参列者は全員火葬に参加するの?
基本的に火葬に参加するのは、葬儀参列者の中でも喪主・遺族・親族といった、故人と特に親しい人物です。残りの参列者は、葬儀場での出棺を見送って解散となります。なお、故人の友人・知人の中に火葬へ参列してほしい人物がいる場合は、同行を依頼することも可能です。この場合、火葬場へ向かうマイクロバスの定員数に不足がないようあらかじめ確認しておきましょう。
納骨までの期間、骨壺はどのように保管するの?
仏式の場合、忌明けとなる四十九日までは自宅などに設置する後飾り祭壇に骨壺を安置して保管します。後飾り祭壇は別名・中陰祭壇とも呼ばれ、葬儀で使った遺影や白木の位牌のほか、焼香用の香炉や燭台、おりんなどの仏具を配置します。
後飾り祭壇は、自宅に仏壇があればその隣に配置するのが理想的ですが、なければ他の場所でも構いません。自宅に弔問客が訪れた際は、この後飾り祭壇へお参りしていただくことになります。なお、後飾り祭壇はご自身で用意しても構いませんが、葬儀社に祭壇の手配や設置を行ってもらうのが一般的です。
火葬以外の葬送方法は選べるの?
日本では、葬法として火葬が選ばれることがほとんどです。実際、厚生労働省が示している2021年度の衛生行政報告例によると、全埋葬数に対する火葬の割合は99%以上となっています。日本でも法律上は遺体を土にそのまま埋める土葬を選択することも可能ですが、現実的に難しいのが実情です。
土葬を行う場合、土葬が許可された土地や墓地に埋葬する必要があります。しかし日本には、条例によって土葬が禁止されていたり、墓地が土葬を許可していなかったりと、土葬が許可されている場所がほとんど存在しません。そのため、土葬に適した土地や墓地を見つけるハードルが非常に高く、火葬を選ばざるを得ないのが実情です。なお、土葬する場合は、自治体から土葬許可証を発行してもらう必要があります。
最近よく耳にする”火葬式”とはどんな葬儀?
火葬式とは、通夜や葬儀・告別式を行わず、火葬のみを行う葬儀のことです。直葬と呼ばれる場合もありますが、どちらも同じ意味です。火葬式ではご逝去後、一度別の場所へ遺体を安置します。式当日に納棺を行った後、直接火葬場へと移動して火葬・骨上げを行うのが基本的な流れです。
火葬式は通夜や葬儀・告別式がない分、短い時間で済ませられるほか、葬儀費用を抑えられるなどのメリットがあります。一方で、一般的な葬儀と比べて故人との時間がゆっくりと取れなかったり、親族からの理解が得づらいといったデメリットもある葬儀形式です。葬儀社によっては対応してもらえないこともあるため、火葬式を希望する場合は葬儀社に適したプランがあるか確認してください。
滞りなく火葬を行って葬儀を締めくくろう
本記事では葬儀における火葬について、基本的な流れや注意点を中心に解説しました。お葬式の終盤に行う火葬は、いわば締めくくりともいえる儀式です。前もって流れを把握しておくことで、故人との最期の別れを落ち着いて過ごせます。ぜひ本記事を参考に、滞りなく火葬を進めましょう。